5月に入ると、ネットやお店の入り口は父の日ムード一色になりますね。ネクタイ、お酒、ちょっと豪華なおつまみセット。そんなおすすめギフトの特集を見かけるたびに、どこか自分事として捉えきれない、不思議な違和感を覚えることはありませんか。
特に、お子さんがまだ0歳から2歳くらいの新米パパさん、あるいは育児真っ盛りのパパさんにとって、本当に喉から手が出るほど欲しいものは、きっと箱に入った贈り物ではないはずです。日々の寝不足や仕事との両立、そして慣れない育児に奔走する中で、僕たちの心が求めている本当のニーズは何なのか。
今回は、職場の先輩パパとして、心理学の知見も借りながら、僕たちが父の日にデザインすべき理想の休日についてお話ししていきます。
世の中の「父の日おすすめギフト」に違和感を抱くパパたちへ
デパートの広告に並ぶ定番のギフト。もちろん貰えるのは嬉しいですし、家族が自分のために何かを選んでくれたという事実は、何物にも代えがたい喜びです。でも、いざ自分に問いかけてみると、本当にそのネクタイを締めて仕事をしたいのか、その高級ビールで疲れを癒やしたいのか、答えが少しぼやけてしまうことがあります。
妻から「父の日、何か欲しいものある?」と聞かれて、咄嗟に「特にないよ」とか「何でもいいよ」と答えてしまうパパは少なくありません。これは欲がないわけではなく、今自分が本当に求めているものを自分自身で言語化できていないからかもしれません。
特に0歳から2歳のお子さんがいる家庭では、パパという役割は、想像以上に重たい責任とセットになっています。仕事から帰ればすぐにお風呂や寝かしつけ、休日は公園遊びやオムツ替え。自分の意志で動ける時間が極端に減り、常に誰かのニーズに応え続ける日々の中で、僕たちの心は少しずつ摩耗しています。
この時期のパパたちが感じている違和感の正体は、自分という個人の意志がどこかへ置き去りにされているような、そんな感覚ではないでしょうか。だからこそ、形のあるプレゼントを貰うだけでは、根本的な満足感が得られにくいのです。
僕たちが本当に求めているのは有能感と自由時間だった
心理学の世界には、エドワード・L・デシとリチャード・ライアンが提唱した自己決定理論という考え方があります。人間が持続的な幸福感やモチベーションを維持するためには、三つの心理的欲求が満たされる必要があるという理論です。
その三つとは、自分の行動を自分で決めたいという自律性、自分には能力があると感じたい有能感、そして他者と温かくつながっていたいという関係性です。
今の僕たちパパの生活を、この三つの視点で見つめ直してみましょう。
まず、自律性についてです。乳幼児のいる生活では、自分の時間はほぼゼロになります。朝起きる時間から夜眠る瞬間まで、子どもの機嫌や生理現象にスケジュールを支配されます。これは自律性が著しく損なわれた状態です。だからこそ、僕たちは何よりも自由時間が欲しいと切望するわけです。
次に、有能感です。仕事ではベテランでも、家の中では新米です。妻からやり方の不備を指摘されたり、子どもが泣き止まなかったりすると、自分はこの家で役に立っているのだろうかという不安に襲われます。この有能感の欠如が、パパとしての自信を削いでしまうのです。
最後に、関係性です。家族のために頑張っているはずなのに、どこか疎外感を感じてしまう。そんなとき、僕たちはモノよりも、家族の一員として認められ、必要とされているという実感を求めています。
パパとしての自分をアップデートする自己決定理論の活用法
この三つの欲求を理解すると、父の日の過ごし方がガラリと変わります。ただ漫然と休日を過ごすのではなく、心理的なエネルギーをチャージする戦略を立ててみましょう。
自律性を取り戻すための第一歩は、受動的な育児から能動的な選択へのシフトです。やらされていると感じるオムツ替えを、自分の意志で、今のタイミングでやる、と決める。たったそれだけの意識の変化で、自律性は少しずつ回復していきます。
そして有能感を高めるためには、自分自身のハードルを適切に設定することが大切です。完璧なパパを目指すのではなく、今日一日、子どもを笑顔にできた、あるいは妻がコーヒーを飲む時間を5分作れた。そんな小さな成功体験を自分の中でカウントしていきましょう。妻からの、助かったよ、という一言は、有能感を満たす最大のご馳走になります。
関係性については、感謝の交換が鍵になります。父の日はパパが感謝される日ですが、あえてパパ側から、いつも育児をリードしてくれてありがとう、と妻に伝えてみる。お互いの関係性を再確認することで、家の中がより心地よい居場所へとアップデートされていくはずです。
出典:エドワード・L. デシ『人を伸ばす力』

