3月といえば学年末。クラス替えや進級を控えて、子供たちの心も少しざわつく時期ですよね。 そんなとき、放課後に遊びに行った我が子が、涙目で帰ってきて玄関先で叫ぶ。「もう〇〇くんなんて知らない! 二度と遊ばない!」
ランドセルを投げ出し、わんわん泣く子供を見て、パパである私たちはどう感じるでしょうか。 「またか…」「今度は何をしたんだ?」と、つい溜め息をついてしまうかもしれません。そして、早く泣き止ませたい、早く解決して安心させたいという親心から、こんな言葉をかけていませんか?
「まあまあ、落ち着いて。何があったの? ちゃんと説明してごらん」 「お前も何か悪いこと言ったんじゃないか? 謝って仲直りしなさい」
実はこれ、低学年の子供にとっては、傷口に塩を塗るようなものなんです。 私たち大人は、トラブルが起きると反射的に「原因究明」と「解決策」を探してしまいます。仕事ではそれが正解だからです。でも、子供の友達トラブル、特に低学年のうちは、その「正しさ」が逆に子供を追い詰めてしまうことがあります。
今回は、つい解決を急いでしまうパパが、裁判官のような「尋問者」から、子供の心に寄り添う「共感的なナレーター」へと変わるためのヒントをお伝えします。
なぜ「仲直りしなさい」が逆効果なのか?
子供がトラブルを抱えて帰ってきたとき、親としては一刻も早く平穏な日常を取り戻したいですよね。だからこそ、すぐに「仲直り」というゴールを目指して走ろうとします。しかし、そのスピード感こそが、子供との心の距離を広げてしまう原因になりかねません。
パパの正論は、傷ついた心への「尋問」になる
泣いている子供に対して、「何があったの?」「誰が先にやったの?」「お前はどうしたの?」と畳みかけるように質問していませんか? パパとしては状況を整理したいだけなのですが、子供にとってはこれが「尋問」に聞こえてしまいます。
子供は今、友達と喧嘩して傷つき、悲しみや怒りでいっぱいの状態です。そんな時に、事実確認を迫られると、「パパは僕(私)の気持ちなんてどうでもいいんだ」「僕が悪いって責められているんだ」と感じてしまうのです。 たとえパパの言うことが正論で、「喧嘩両成敗」が真理だとしても、心が弱っている時には、その正しさが鋭い刃物のように突き刺さります。
まずは「事実」よりも「感情」を受け止めること。これができていない段階でのアドバイスは、残念ながら子供の耳には届きません。
脳の「扁桃体」が暴走中?まずは理屈より安心感を
少し専門的な話をすると、強いストレスや感情の高ぶりを感じている時、脳の中にある「扁桃体」という部分が興奮状態にあります。ここは「闘争・逃走反応」を司る原始的な部分で、ここが暴走していると、理性を司る「前頭葉」がうまく働きません。
つまり、泣きじゃくっている子供に「仲直りの必要性」や「社会的なルール」を説いても、脳の仕組みとして理解できない状態なのです。 まずは、この暴走している扁桃体を鎮めてあげる必要があります。そのために必要なのは、論理的な説得ではなく、「ここは安全だ」「パパは味方だ」という安心感です。
「嫌だったね」「悲しかったね」と共感し、背中をさすってあげる。そうして扁桃体の興奮が収まって初めて、子供はパパの話を聞く準備が整うのです。
低学年の子供はまだ「自分の気持ち」を知らない
小学校低学年の子供たちは、語彙力もまだまだ発展途上です。 心の中には「モヤモヤ」「イライラ」「ズキズキ」といった感情の嵐が渦巻いていますが、それを「悔しい」「寂しい」「羨ましい」といった言葉で表現することができません。
自分でも何が起きているのか分からない混乱状態の中で、「どうしてそんなことしたの?」「理由を言いなさい」と問われても、答えようがないのです。答えられない自分に焦り、さらにパパに詰め寄られることで、子供は心を閉ざしてしまいます。 「もういい! パパなんて嫌い!」となってしまうのは、実は子供なりの防衛反応なのかもしれません。
必要なのは、子供に説明させることではなく、パパが子供の代わりに、その名もなき感情を拾い上げてあげることなのです。
パパの役割は「裁判官」ではなく「ナレーター」
では、泣いている子供を目の前にして、パパは何をすればいいのでしょうか。 答えは、正しさをジャッジする「裁判官」の席を降りて、子供の気持ちを代弁する「ナレーター」になることです。
「ナレーター」とは、子供が今体験しているドラマの状況や感情を、客観的かつ温かい言葉で実況してあげる役割です。パパがナレーターになると、不思議と子供の心は落ち着きを取り戻していきます。
「何があった?」と聞く前に「辛かったね」と寄り添う
子供が泣いて帰ってきたとき、第一声は「何があった?」ではなく、「辛かったね」「びっくりしたね」といった共感の言葉を選んでみてください。 これは、パパが「出来事(事実)」ではなく「あなたの心(感情)」に関心があるというメッセージになります。
もし言葉が出てこないようなら、ただ黙って背中をさすったり、抱きしめたりするだけでも十分です。非言語的なコミュニケーションは、言葉以上に「パパは味方だ」という安心感を伝えます。 子供が「うん…」と頷いたり、少し涙が引いてきたりしたら、それは心の扉が少し開いた合図です。
感情に名前をつける「ラベリング」が脳を鎮める
子供が少し落ち着いてきたら、今感じているモヤモヤした感情に名前をつけてあげましょう。これを心理学では「情動のラベリング」と呼びます。
「悔しかったんだね」 「自分だけ怒られて、悲しかったんだね」 「もっと遊びたかったのに、残念だったね」
このように、パパが子供の気持ちを推測して言葉にしてあげることで、子供は「今のこの嫌な感じは『悔しい』ってことなんだ」と理解できます。 感情に名前がつくと、脳の前頭葉が働き始め、暴走していた扁桃体が鎮まります。わけのわからない恐怖や不安が、扱い可能な「感情」へと変わるのです。
もし推測が間違っていたら、子供は「違うよ、悔しいんじゃなくて、寂しかったんだよ」と訂正してくれます。それはそれで大成功です。子供自身が自分の感情を言葉にできた瞬間だからです。
ナラティブ・アプローチで子供の「物語」を整理する
感情が落ち着いてきたら、少しずつ出来事を聞いていきますが、ここでも尋問は禁物です。 「ナラティブ・アプローチ」という心理療法の手法を応用して、子供と一緒に物語を紡ぐような感覚で話を聞いてみましょう。
「そうか、〇〇くんと鬼ごっこをしていたんだね」 「そこでルールが変わっちゃって、戸惑ったんだね」 「それで、言い返せなくて嫌になっちゃったのかな」
パパが子供の話をリピートしたり、要約したりしながら、子供の頭の中にあるごちゃごちゃした映像を、一本の映画のように整理してあげます。 主語を「あなた」ではなく「その出来事」や「トラブル」に置くことで、子供自身を責めることなく、問題を客観視できるようになります。 「〇〇くんが悪い」「僕が悪い」という犯人探しではなく、「どうして楽しい遊びが、喧嘩という物語になっちゃったんだろうね?」と一緒に考える姿勢が大切です。
子供が自分で歩き出すための「安全基地」になる
パパがナレーターとして寄り添うことの最終的な目的は、トラブルをパパが解決することではありません。子供が自分の力で立ち直り、また友達の輪の中へ戻っていけるように勇気づけることです。
解決しなくていい。「味方」がいるだけで子供は強くなる
私たち親は、つい「明日、学校で謝ろう」「先生に言っておくから」と、具体的な解決策を提示したくなります。 しかし、低学年の子供にとって本当に必要なのは、解決策ではなく「パパはどんな時でも自分の味方でいてくれる」という確信です。
「パパは、あなたがどんな気持ちでも大好きだよ」 「何があっても、パパはあなたの味方だからね」
そう伝えてあげるだけで、子供の心には力が湧いてきます。 「解決」は子供自身が時間をかけて行うプロセスです。今日すぐに仲直りできなくても、明日できなくても大丈夫。パパがどっしりと構えていてくれれば、子供は自分のタイミングで動き出せます。
家が「安全基地」であれば、外の世界でまた挑戦できる
アタッチメント理論(愛着理論)に「安全基地」という言葉があります。 子供にとって家庭が、傷ついた羽を休め、エネルギーをチャージできる「安全基地」であれば、子供は外の世界(学校や友達関係)での冒険や挑戦を恐れなくなります。
逆に、家でも「お前が悪い」「もっとこうしなさい」と追い詰められてしまうと、子供は逃げ場を失い、外の世界でも委縮してしまいます。 「外で嫌なことがあっても、家に帰ればパパが聞いてくれる」。その安心感さえあれば、子供は何度でも立ち上がり、失敗から学び、やがて自分なりの人付き合いの方法を見つけていくでしょう。
今日から実践できる「共感パパ」の魔法の言葉
最後に、明日からすぐに使える「共感パパ」のフレーズをいくつか紹介します。子供がトラブルを抱えて帰ってきたとき、お守り代わりに思い出してください。
- 「おかえり。今日は大変だったね」
- 「話してくれてありがとう」
- 「それは悔しい気持ちになるのも当然だよ」
- 「パパはいつでも味方だからね」
- 「どうしたいか決まったら教えてね。応援するよ」
正論やアドバイスは、子供が十分に癒され、「どうすればいいかな?」と聞いてきた時まで取っておきましょう。それまでは、ただ横に座り、同じ景色を眺めるナレーターでいてあげてください。
パパが変われば、子供の世界も変わる
子供の友達トラブルを前にして、親が「解決」を手放すことは、実はとても勇気がいることです。 「早く何とかしてあげたい」という愛情があればあるほど、黙って見守ることは苦しく感じるかもしれません。でも、その手放す勇気が、子供の「自分で乗り越える力」を育てます。
パパが「裁判官」から「ナレーター」に変わるだけで、家庭は子供にとって最高の「安全基地」になります。 「どんな自分でも受け入れてもらえる」という絶対的な安心感。それさえあれば、子供たちはまた外の世界へ飛び出し、傷つくことを恐れずに、豊かな人間関係を築いていけるはずです。
今日から、解決しない勇気を持って、子供の物語を一番近くで聞く観客になってみませんか?
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