深夜、子どもの苦しそうな寝息や、熱い体で泣きながらすり寄ってくる我が子。その小さな体を前に、どうすればいいのか分からず、パニックになりそうになる。 そんな経験は、父親なら誰しもが通る道です。
大丈夫。この記事は、そんなパニック寸前のパパを、冷静で頼れる「家族のヒーロー」に変えるための、緊急時対応マニュアルです。
夜中に起こりやすい3大症状「発熱」「嘔吐」「けいれん」について、パパが「何をすべきか」「何をしてはいけないか」を、具体的にお伝えします。
対応の前に:幼稚園児の体の3つの特徴
まず、なぜこの時期の子どもが、大人を驚かせるような症状を見せるのかを知っておきましょう。理由がわかれば、冷静さを保てます。
① 高熱を出しやすい
幼児の体は、まだ体温をコントロールする機能が未熟です。そのため、ちょっとした風邪でも、ウイルスと戦うために一気に体温を上げ、39℃以上の高熱が出ることも珍しくありません。熱が高いこと自体を、過度に恐れる必要はありません。
②「熱性けいれん」を起こしやすい
特に熱が急上昇するタイミングで、脳が未熟なために興奮状態になり、白目をむいて手足が突っ張る「熱性けいれん」を起こすことがあります。見た目は非常に衝撃的ですが、多くは5分以内に収まり、後遺症を残さない良性のけいれんです。パニックにならないことが、何より大切です。
③ 脱水症状になりやすい
嘔吐や下痢が続くと、体の水分がすぐに失われてしまいます。体の小さい幼児は、大人よりもずっと早く脱水症状に陥る危険性があります。水分をどう摂らせるかが、重要な鍵になります。
【症状別】夜間救急マニュアル
ここからは、具体的な症状別に、パパが取るべき行動をステップで解説します。
Case 1:発熱
Step 1: 観察(Observation Checklist)
体温計の数字だけでなく、子どもの”全身状態”を観察します。
- □ 機嫌はどうか?(ぐったりしているか、意外と元気か)
- □ 顔色・唇の色は悪くないか?
- □ 呼吸は苦しそうでないか?
- □ 水分は摂れているか?(お茶などを欲しがるか)
- □ おしっこは出ているか?(脱水症状の目安)
Step 2: 対応(What to Do)
- 服装を調整する: 汗をかいていたら、こまめに着替えさせ、熱がこもらないように薄着にします。
- 体を冷やす: 子どもが嫌がらなければ、タオルでくるんだ保冷剤などで、首の付け根、脇の下、足の付け根といった太い血管が通る場所を冷やすと効果的です。
- 水分補給を促す: 麦茶や子ども用のイオン飲料、経口補水液などを、一度にたくさんではなく、少しずつ、こまめに与えます。
- 解熱剤を使う: 薬は、熱を下げること自体が目的ではありません。熱が高くて眠れない、つらくて水分が摂れないなど、ぐったりしている時に、体を少し楽にしてあげるために使います。必ず子ども用のものを、用法・用量を守って使いましょう。
NG行動(What Not to Do)
- NG:汗をかかせるために、布団をたくさんかける・厚着させる。 →昔の迷信です。熱が体にこもってしまい、体力を消耗させるだけです。
- NG:元気がないからと、食事を無理強いする。 →発熱時は、胃腸の働きも弱っています。消化の良いものを本人が欲しがる時に、少しだけ与える程度にしましょう。水分補給が最優先です。
Case 2:嘔吐
Step 1: 観察(Observation Checklist)
- □ 意識ははっきりしているか?
- □ 吐いたものの内容は?(食べたもの、胃液など)
- □ 何回くらい吐いているか?
- □ 熱や下痢など、他の症状はあるか?
Step 2: 対応(What to Do)
- 窒息を防ぐ体勢にする: 吐いたものが喉に詰まらないよう、必ず顔ごと体を横向きにして寝かせます。
- 水分補給は、焦らない: 吐き気が強い間は、何も飲ませません。吐き気が落ち着いて30分〜1時間ほど経ってから、スプーン1杯の麦茶やイオン飲料から始めます。飲ませてみて、吐かなければ、また15分後くらいにスプーン1杯…と、慎重に進めます。
- 冷静に片付ける: 汚れた衣類やシーツは、静かに片付けましょう。パパが冷静に対応する姿が、子どもの不安を和らげます。
NG行動(What Not to Do)
- NG:脱水が心配で、吐いた直後にたくさんの水分を飲ませる。 →胃を刺激し、さらに嘔吐を誘発する最悪の対応です。
- NG:吐いたことを叱る。 →子どもはわざと吐いているわけではありません。「大丈夫だよ」「つらかったな」と、優しく声をかけてあげてください。
Case 3:けいれん
Step 1: 観察(Observation Checklist)
- □ 【最重要】すぐにスマホのタイマーで時間を計り始める!
- □ けいれんの様子は?(手足は突っ張っているか、ガクガクしているか、左右対称か)
- □ 顔色、唇の色は?
Step 2: 対応(What to Do)
- 安全を確保する: 周りに頭をぶつけるような危険なものがない、平らな場所に静かに寝かせます。
- 衣服をゆるめる: 呼吸を楽にするため、パジャマの首元のボタンなどを外します。
- 静かに見守る: 熱性けいれんのほとんどは、5分以内に自然に収まります。収まるまで、決してその場を離れず、静かに見守ります。
NG行動(What Not to Do)
- NG:口の中に指や箸、タオルなどを入れる。 →舌を噛むことはほとんどありません。窒息や、口の中を傷つける原因になり、大変危険です。
- NG:大声で名前を呼んだり、体を強く揺さぶったりする。 →不要な刺激は、けいれんを長引かせる可能性があります。
パパの最終判断:連絡先の使い分け
【すぐに救急車(#119)】
- けいれんが5分以上続いている。
- けいれんが止まっても、意識が戻らない、ぐったりしている。
- 呼吸が弱く、顔色や唇の色が紫色になっている。
- 頭を強く打った後に、何度も嘔吐する。
【迷ったら専門家に相談(#8000)】
- 判断に迷う時、とにかく不安な時。
- 「高熱だけど、水分は飲めている。今すぐ病院に行くべきか?」「嘔吐は一回だけ。朝まで様子を見ていい?」など、専門家のアドバイスが欲しい時に電話しましょう。
- こども医療でんわ相談(#8000)
- 夜間・休日に、小児科医や看護師が対応してくれます。
- こども医療でんわ相談(#8000)
【朝まで様子を見る】
- 熱が高くても、水分が摂れていて、すやすら眠れている。
- 嘔吐や下痢があったが、回数は少なく、今は落ち着いている。
- 呼びかけに反応し、機嫌もそれほど悪くない。
まとめ:パパの冷静さが、家族を守るお守りになる
夜中の子どもの急な体調不良は、どんな親にとってもパニックになる出来事です。 しかし、そんな時こそ、父親の冷静さが試されます。慌てず、このマニュアルのチェックリストを一つひとつ確認し、的確に対応する。その頼もしい姿は、不安な子どもとパートナーにとって、何よりも心強い光となるはずです。
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